〜想魔灯〜  蒼鷹†光

死にそうなぐらい冷え切った僕は暖炉に火を入れる
猫が暖炉のそばによってくる
暖炉の周りから少しずつ暖められ
部屋は暖かくなりはじめる
けど僕は暖かくならなかった

仕方がないので大きな薪を追加した
橙色をした炎は成長し大きくなった
部屋は十分暖かくなった

それでも僕は暖かくならなかった

仕方がないので僕は暖炉に近づいた
生き物のようにうねる炎が目の前にある

見ている内にぼんやりとし、ふと楽しかったことを思い返していた
彼女と見た月
彼女と聞いた音楽
彼女と一緒にいた日々
どれもがいい思い出だった


思い返しているてかなりの時間がたったが僕は暖かさを感じることがなかった
皮膚は熱いと悲鳴を上げているのに
皮膚の奥底の方では寒いと嘆いている

さっき傍にいた猫がいつの間にかソファーに移っていた
何かを訴えるような目で僕をじっと見つめている…

また思い返した
彼女はとてもやさしかった
彼女がいつもつけているアクセサリーがとてもよく似合っていた
彼女を抱きしめたときに感じるやわらかさはとてもやさしかった
彼女との思い出はすべて暖かかった

思い返していると辺りが赤色に染まり始めた
思い出の色のような、けれどもどこかやさしい赤色に
赤色が僕を包み始める
包まれても僕は温まることはなかった


また頭が過去を見せ始める
さっきまで赤い糸が繋がっていた彼女との思い出を
出会い、楽しみ、幸せに浸り、そしてさっき糸が切れた
それらをすべてを頭が見せてくる・・・

さぁ、赤色の天使よ
僕を包んでどこかへつれてってくれ
彼女がいない世界なんてつまらないから

赤色の天使はこういった
『思い焦がれ、病んでしまった心よ
そこに見える灯り(あかり)をたどって行くがいい
別の世界へ行くことができるから・・・』

灯り(あかり)をたどり僕は進み始めた・・・

さようなら・・・